カテゴリー

2024年1月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 冬の雨の夜/土砂降り | トップページ | 凄まじい黄昏/屍体累々 »

2008年6月29日 (日)

詩人の帰郷/風に立つ

145

名作が続きます。
噛めば噛むほどに味が出てくる
珠玉の作品の列。

詩篇一つひとつの見事さばかりでなく
詩篇の配列にも妙があります。

詩群の選択および配列に
物語が意図されたのでしょうか。

帰郷という詩は
東京を遠く離れた場所のイメージを
スパッと拓いてみせますが

戦いに敗れて
生まれ故郷に帰省した
というのではなく

故郷に錦を飾ったのでもなく
かといって
蕩児の帰郷とも異なる
詩人の帰郷は……

変な言い方ですが
帰郷それ自体が
詩であったようですし、
一時帰省でありました。

帰郷も詩作の旅の
途中のことでした。

最終連
あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ

ここには
深い悔恨に打ちひしがれる詩人はいません
むしろ
それに答える詩人が
風の中に凛として立っている姿が見えてきます。

と、読めないでしょうか?

 *

 帰郷

柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
    椽の下では蜘蛛(くも)の巣が
    心細さうに揺れてゐる

山では枯木も息を吐く
あゝ今日は好い天気だ
    路傍(ばた)の草影が
    あどけない愁(かなし)みをする

これが私の故里(ふるさと)だ
さやかに風も吹いてゐる
    心置なく泣かれよと
    年増婦(としま)の低い声もする

あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ

(佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』角川文庫クラシックスより)

« 冬の雨の夜/土砂降り | トップページ | 凄まじい黄昏/屍体累々 »

0001はじめての中原中也」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 詩人の帰郷/風に立つ:

« 冬の雨の夜/土砂降り | トップページ | 凄まじい黄昏/屍体累々 »