茶色い戦争ありました/サーカス
茶色い戦争、と読んで
わかったような感じがしますが
なかなかです。
過去には
戦争もあったなあ
疾風の吹く冬もあったなあ
いまじっとそんな過去を回想している自分は
一杯ひっかけて盛り上がっているのです
殷という中国古代都市国家の賑わい
殷賑を極める、という熟語があります
その殷の字をここで使っているのですね
一杯やっているのは
屋外の野原かどこかで
きっと一人なのでしょう
突如、サーカス小屋が目の前に現れ
ブランコが揺れはじめます……
……
ゆあーん ゆよーん
……
というような読みもできるかな
ぜんぜん違っているかもしれません。
*
サーカス
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り
今夜此処での一と殷盛り
サーカス小屋は高い梁(はり)
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒(さか)さに手を垂れて
汚れ木綿の屋蓋(やね)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それの近くの白い灯が
安値(やす)いリボンと息を吐き
観客様はみな鰯(いわし)
咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
屋外(やぐわい)は真ッ闇(くら) 闇(くら)の闇(くら)
夜は劫々と更けまする
落下傘奴(らくかがさめ)のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
« トタンがセンベイ食べる/春の日の夕暮 | トップページ | はなだ色/朝の歌 »
「0001はじめての中原中也」カテゴリの記事
- <再読>時こそ今は……/彼女の時の時(2011.06.13)
- <再読>生ひ立ちの歌/雪で綴るマイ・ヒストリー(2011.06.12)
- <再読>雪の宵/ひとり酒(2011.06.11)
- <再読>修羅街輓歌/あばよ!外面(そとづら)だけの君たち(2011.06.10)
- <再読> 秋/黄色い蝶の行方(2011.06.09)
コメント