汚れつちまつた悲しみに/狐の皮裘
「汚れちまった悲しみに」の中で
「たとえば狐の皮裘」と
中也は
古風とも、モダンとも受け取れる
比喩を用いています
皮裘は「かわごろも」と読みます
中国では古来、
狐の皮毛で作った衣服を尊重し
高貴な女性が着用するものとされています
詩句に沿って読むと
では
これはだれが着ていたものでしょうか
「汚れちまった悲しみ」の主体は
だれだったのでしょうか
これを
長谷川泰子と読む解釈と
中原中也その人と読む解釈とが
錯乱しています
*
汚れつちまつた悲しみに……
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日は風さえ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとえば狐の革裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む
汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる…
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