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2008年6月19日 (木)

はなだ色/朝の歌

006

一つ齧っては、また一つ
充分に感じられたのか
存分に味わえたのか
漠とした感覚を残しながら
また一つ、と中也の詩の中に
分け入って行きます。

 *

 朝の歌

天井に 朱(あか)きいろいで
  戸の隙を 洩れ入る光、
鄙(ひな)びたる 軍楽の憶(おも)ひ
  手にてなす なにごともなし。

小鳥らの うたはきこえず
  空は今日 はなだ色らし、
倦(う)んじてし 人のこころを
  諫(いさ)めする なにものもなし。

樹脂(じゆし)の香に 朝は悩まし
  うしなひし さまざまのゆめ、
森竝(もりなみ)は 風に鳴るかな

ひろごりて たひらかの空、
  土手づたひ きえてゆくかな
うつくしき さまざまの夢。

(佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』角川文庫クラシックスより)

グンとやわらかい感じになったようです。
文語調ですし
ソネットというのも元来優しい響きを放つものなのでしょうか。

静かな朝の情景のようです

前夜、酔っ払っちまって眠り込んだ中也は
目覚めた床の中で
雨戸を漏れる真っ赤な陽光を見ます

ああ、朝が来たんだ
外は晴れ上がって
ラピスラズリの空…。
はなだ色らしい。

静かな朝の気分に浸っています

樹脂の香り
風が鳴る
広々とした空…

しみじみとした
希望さえ感じさせる
安定した時間…

ばんざい!を言いたくなってきます

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