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2008年6月24日 (火)

丸ビル風景/正午のサラリーマン

128

中也がサラリーマンを歌った詩は
もう一つ
有名な「正午 丸ビル風景」があります。

昼休みのサイレンが鳴ると
ワーッとサラリーマンたちが
ビルの小さな玄関からゾロゾロ出てくる様子を

サイレンだサイレンだ
出てくるわ出てくるわ
小ッちやな小ッちやな

ぷらりぷらり
あとからあとから
ぞろぞろぞろぞろ
響き響きて

などと、リフレインを
面白いほど上手に
効果的に使って
ユーモラスな響きの中に
描いています

まるで
チャップリンが
しがない労働者を見る目と
同じに見えてきます。
あの、あったかい眼差し。

中也には
サラリーマンが
毎日毎日同じことを繰り返す
リフレインそのものでした。

 *

 正午
  丸ビル風景

あゝ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
月給取の午休み、ぷらりぷらりと手を振つて
あとからあとから出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちやな小ッちやな出入口
空はひろびろ薄曇り、薄曇り、埃りも少々立つてゐる
ひよんな眼付で見上げても、眼を落としても……
なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな
あゝ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちやな小ッちやな出入口
空吹く風にサイレンは、響き響きて消えてゆくかな

(佐々木幹郎編「中原中也詩集『在りし日の歌』角川文庫クラシックスより)

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