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2008年7月20日 (日)

木蔭/詩人の休息

20080719_025

詩作品そのものから
しばし離れざるを得ず
詩集「山羊の歌」の外部を
少しばかりたどりました。

梅雨が明けて
季節は夏です。

意図したわけではありませんが
この時期の詩といっていいでしょう
木陰が気持ちよい季節です

夏、真昼、神社の境内、楡の木陰……

これらは
ぼくの過去から現在にわたって
まとわりつく後悔

涙に濡れた闇のように
いまや疲労と化して
身体に溜まり

朝から晩まで
忍従するしかなく
怨むことさえない
生気を失った心で
空を見上げるぼくの眼を

なぐさめてくれる
ああ
なぐさめてくれる

木陰です。

ここに
泰子の影を読む人もいます。

 *
 木蔭

神社の鳥居が光をうけて
楡(にれ)の葉が小さく揺すれる
夏の昼の青々した木蔭は
私の後悔を宥(なだ)めてくれる

暗い後悔 いつでも附纏ふ後悔
馬鹿々々しい破笑にみちた私の過去は
やがて涙つぽい晦暝(くわいめい)となり
やがて根強い疲労となつた

かくて今では朝から夜まで
忍従することのほかに生活を持たない
怨みもなく喪心したやうに
空を見上げる私の眼(まなこ)――

神社の鳥居が光をうけて
楡の葉が小さく揺すれる
夏の昼の青々した木蔭は
私の後悔を宥めてくれる

*破笑 思わず笑うこと。
*晦暝 暗闇。

(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』より)

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