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2008年7月15日 (火)

詩人の祈り/妹よ

20080616_090

女ならだれしも
もう死んだっていいよう、と
どこか心の底で思っているのであろう。

なぜ、そんなことが言えるのか
というと
男だってだれしも
もう死んだっていいよう、と
思うことがあるからであります。

人はだれしも
もう死んだっていいよう、と
どこか心の底で思っていることがあるらしく

だから
可愛い女が、そう言うとき
男は、何をすればいいのか
何と言ってやればいいのか
途方に暮れるのであります

だから
祈るしかないのであります。

もう死んだっていいよう、を聞く人は
だから、お兄さんにならざるを得ないのです。

 *

 妹よ

夜、うつくしい魂は涕(な)いて、
  ――かの女こそ正当(あたりき)なのに――
夜、うつくしい魂は涕いて、
  もう死んだつていいよう……といふのであつた。

湿つた野原の黒い土、短い草の上を
  夜風は吹いて、 
死んだつていいよう、死んだつていいよう、と、
  うつくしい魂は涕くのであつた。

夜、み空はたかく、吹く風はこまやかに
  ――祈るよりほか、わたくしに、すべはなかつた……

(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』より)

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