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2008年7月 1日 (火)

凄まじい黄昏/屍体累々

054

丸2日しきりに考える詩でした。
ただの黄昏ではないのだな
凄まじいのだ、このたそがれは……。

3-3-3-2を
繰り返し読んでみるのですが
戦世(いくさを)を思うほどに
何が今、凄まじいのだろう
詩人の心の内に荒れ狂うのは
憤り? 悲しみ?  嫉妬?
口惜しさ?

どこか広々とした草原を
眼下に見ているのでしょうか。
風がビュービュー吹き
いい加減、煩わしいほどに吹き止みません。
草々は横倒しに吹きつけられるままです。
こうも荒涼とした風景につつまれては
自然と遠き時代の薩摩隼人らが行った
戦のことが思いやられてきます。

いかにも急ごしらえの竹やりの一群が
川沿いを進んでいきました
一個の雑兵(ぞうひょう)であることに
自分を任せきって。

風は
行く手行く手の累々たる屍を
運ぶこともしない、できない。
その彼方の空は
死体の山にかぶさるように
立ち上がっている

戦いに参加していない家々の者こそは
賢い陪臣(また家来)なのです
煙草のヤニで汚れた歯を隠して
ひたすら見せかけの従順を装っています

第3連終行の
空、演壇に立ち上がる。が、
難解を極めましたが
なんとか僚友・来人のアドバイスを得て
演壇を屍の塚と解釈しました。

ひとたび解釈できると
ほかの解釈も生まれてくる
多様な解釈を許容する
不思議な魅力。

中也詩の、ここにも、強さがあるようです。

 *

 凄じき黄昏

捲き起る、風も物憂き頃ながら、
草は靡(なび)きぬ、我はみぬ、
遐(とほ)き昔の隼人(はやと)等を。

銀紙(ぎんがみ)色の竹槍の、
汀(みぎは)に沿ひて、つづきけり。
――雑魚(ざこ)の心を俟(たの)みつつ。

吹く風誘はず、地の上の
敷きある屍(かばね)――
空、演壇に立ちあがる。

家々は、賢き陪臣(ばいしん)、
ニコチンに、汚れたる歯を押匿す。

(佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』角川文庫クラシックスより)

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