カテゴリー

2023年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

« 無限の前に腕を振る/盲目の秋 | トップページ | 詩人の祈り/妹よ »

2008年7月13日 (日)

二人だけの時/わが喫煙

165

これ以上
何を望んだのだろうか
何を求めたのだろうか

中原中也と長谷川泰子の
二人だけの時間が
これも14行に
濃密に刻まれました。

二人の距離は
もやは、ない、
と言えるほどに
近しい
港町、横浜あたりへのデート。

幾分か、
誇らしげでもある
詩人の心根が見える気がします。
こんな時もあったのだ。

にも拘わらず
自分の女ではない
自分の伴侶ではない

いや、そういうことではありません

自分の気持ちには応えていない女
一緒に、デートを楽しんでいるけれど
自分を心底で好いてくれてはいない女が
憎い……

 *

 わが喫煙

おまへのその、白い二本の脛(あし)が、
  夕暮、港の町の寒い夕暮、
によきによきと、ペエヴの上を歩むのだ。
  店々に灯がついて、灯がついて、
私がそれをみながら歩いてゐると、
  おまへが声をかけるのだ、
どつかにはひつて憩(やす)みませうよと。

そこで私は、橋や荷足(にたり)を見残しながら、
  レストオランに這入(はひ)るのだ――
わんわんいふ喧騒(どよもし)、むつとするスチーム、
  さても此処(ここ)は別世界。
そこで私は、時宜にも合はないおまへの陽気な顔を眺め、
  かなしく煙草を吹かすのだ、
一服、一服、吹かすのだ……

(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』より)

« 無限の前に腕を振る/盲目の秋 | トップページ | 詩人の祈り/妹よ »

0001はじめての中原中也」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 二人だけの時/わが喫煙:

« 無限の前に腕を振る/盲目の秋 | トップページ | 詩人の祈り/妹よ »