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2008年9月12日 (金)

「在りし日の歌」に秋を拾う

思いついて
詩集「在りし日の歌」の中の
「秋」を拾ってみました。

 

中也は
春夏秋冬のいずれをも
万遍なく歌っていることに気づきます。
秋だからといって
特別の意味を込めているわけでもなさそうです。

 

幾分か、傾向というものは
あるかもしれませんが
ここでは深追いしません。

 

そもそも詩集「在りし日の歌」は
「在りし日の歌」と「永訣の秋」に分けられており
ここにすでに「秋」はあり、
この「秋」に
文也の死が色濃く映し出されていることを知ると
やはり、タイトルを立てた意味を
想像しないわけにもいきません。

 

1番目の作品「含 羞(はぢらひ) ――在りし日の歌――」に
秋 風白き日の山かげなりき
の1行はあり
詩集冒頭から「秋」です。

 

続いて、16番目の「秋の日」に、
秋は 美し 女の 瞼(まぶた)
国道 いゆけば 秋は 身に沁む
秋は 案じる くちびる 結んで
の3行が1、2、4連に。

 

19番目の「老いたる者をして ――「空しき秋」第十二」は
秋の語句はないものの
東明(しののめ)の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
とあるのが秋っぽい。

 

22番目の「秋の消息」は
昨11日に見たとおり。
秋の日は、からだに暖か
手や足に、ひえびえとして

 

24番目
「秋日狂乱」
今は春でなくて、秋であつたか

 

25番目の「朝鮮女」
朝鮮女(をんな)の服の紐
秋の風にや縒(よ)れたらん

 

33番目「お道化うた」
霜の降つたる秋の夜に、

 

35番目「残暑」
覚めたのは 夕方ちかく
まだかなかなは 啼(な)いてたけれど

 

39番目「独身者」
石鹸箱には秋風が吹き
郊外と、市街を限る路の上には
大原女(おはらめ)が一人歩いてゐた

 

42番目「蜻蛉に寄す」
あんまり晴れてる 秋の空
赤い蜻蛉(とんぼ)が 飛んでゐる

 

「永訣の秋」には
意外にも
44番目「一つのメルヘン」
秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、
だけでした。

 

このほかに
「秋」の言葉はなくても
秋を感じさせる詩が
いくつかあるのは当然です。

 

(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『在りし日の歌』より)

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