中原中也とマレーネ・ディートリッヒ<2>
中也は、吉田秀和とともに
新宿の武蔵野館で「嘆きの天使」を見ましたが、
多分、その日のうちに、
1作、歌います。
よく読むと
やはり、中也の詩になっています。
仲良しグループの
タメ語と愛想笑い、
そのうすら幸福顔の
底に隠れた貧困な精神
そんな奴らの言葉を気にするなんて、
そんな奴らの言葉に気をとられるなんて、
と、浮世にあわせて苦労する
マルレネよ
つまらんです。
無駄だよ、徒労だよ。
セミチックは、セム族の意でしょう。
昭和5年(1930)から12年(1937)頃まで使われていた
「早大ノート」にある作品です。
*
マルレネ・ディートリッヒ
なあに、小児病者の言ふことですよ、
そんなに美しいあなたさへ
あんな言葉を気にするなんて、
なんとも困つたものですね。
合言葉、二週間も口端にのぼれば、
やがて消えゆく合言葉、
精神の貧困の隠されてゐる
馬鹿者のグループでの合言葉。
それがあなたの美しさにまで何なのでせう!
その脚は、形よいうちにもけものをおもはせ、
あなたの祖先はセミチック、
亜米利加(アメリカ)古曲に聴入る風姿(ふぜい)、
ああ、そのやうに美しいあなたさへ
あんな言葉に気をとられるなんて、
浮世の苦労をなされるなんて、
私にはつまんない、なにもかもつまんない。
(「中原中也全詩集」角川ソフィア文庫より)
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