ダダ音楽の歌詞/躍動する16歳
「中原中也全詩集」(角川ソフィア文庫)は、
角川書店版「新編中原中也全集」の
第1巻「詩Ⅰ」、と第2巻「詩Ⅱ」を底本とし、
中原中也が作った詩篇のすべてが収録されている
廉価版詩集です。
中也の詩作品を完全にフォローしており、
作品の編集・配列は、
現在の中也研究の最高峰、最前線ですから、
少なくとも、詩を読みたい人には、
手っ取り早く、重宝なテキストです。
その「未発表詩篇」の「ダダ手帖」には、
「タバコとマントの恋」のほかにもう一つ
「ダダ音楽の歌詞」が載っています。
「ダダ手帖」とは、
河上徹太郎が昭和13年に書いた
「中原中也の手紙」(文学界10月号)に
引用した2篇の詩、
すなわち、「タバコとマントの恋」と「ダダ音楽の歌詞」などを書いたノートをさします。
手帖そのものは、
戦災で焼け、現存しません。
ダダイスト新吉を知って
なんでもやっていいのだ、
という表現の自由を実践する
16歳の詩人。
ダダを理解しない石頭たちに
盛んに宣伝する中也。
それにしても
4-4-4-2のソネットが
ここにあります。
定型への意志が
なくなってしまったわけではありません。
物語
語呂合わせ
思想的展開
お道化
リフレイン
落ち(起承転結)
……
若き詩人が
躍動しています
*
ダダ音楽の歌詞
ウワキはハミガキ
ウワバミはウロコ
太陽が落ちて
太陽の世界が始まった
テッポーは戸袋
ヒョータンはキンチヤク
太陽が上つて
夜の世界が始まつた
オハグロは妖怪
下痢はトブクロ
レイメイと日暮が直径を描いて
ダダの世界が始つた
(それを釈迦が眺めて
それをキリストが感心する)
中原中也全詩集 |
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