カテゴリー

2023年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

« 六月の雨/懸賞応募作品 | トップページ | 芥川賞作家・町田康の中也読み/戦士 »

2008年10月27日 (月)

芥川賞作家・町田康の中也読み/面倒くさい奴

青春時代には、
だれもみな、
中也に似た友人や知人を知るだろう。
極く親しい友人になったり、
遠くのほうから眺めているだけであったりもするが、
ある日、忽然と、消えてしまったりもする。

 

近くで付き合ってみると、
そいつに、自分の領域を侵されて、
逃げ出したくなったり、
追い返したくなったり、
しかし、いなくなってみると、
無性に懐かしい……。

 

中原中也は、そんじょそこらにはいないが、
似た人はいるものです。
中也の詩を読みながら、
その似た人が頭の中にあることに
驚くことがあります。

 

町田康にも、そんな友人や知人が
いるかもしれません。
いたかもしれません。
友人が、中也を去って行ったわけを、
解き明かす町田康の口ぶりは、
友人を語るかのように、
遠慮がありません。

 

町田康は、

 

結局、彼らは自分の身を守りたかったのではないでしょうか。中也からというよりも、中也の言っていることから身を守りたかったんですね。

 

では、中也は何を言っていたかというと、それは、芸術の世界に身を置く以上、真実とか美とかいったものに奉仕しなければならない、ということなんです。(略)

 

みんな食うためにものを書いたり何か作ったりしている。それはまだ正直なほうで、食うための仕事は別に持って、余技として芸術的なことをやっていたりする。そこのところを、中也は突いていくわけです。

 

言われたほうは迷惑なんですけど、正論だから何も言い返せない。すると、中也のほうは「あ、こいつまだわかってないのかな」と、もっと真剣に教えてあげたりする。そばに来られたら面倒くさい奴ですよ。
(以上、テキストからの引用。)

 

と、語ります。

 

ここです!
そばに来られたら面倒くさい奴ですよ。
と、ズバリ、
中也の相手になった側の気持ちを表明するところ。
中也を深く知らなければ
こうは言えません。

 

しかも、中也の相手になった、
いわば敵の気持ちも汲(く)んでいます
ここが、町田康ならではの、
遠慮なさ、デリカシー……非凡さ。

 

そして、
ここでほとんどの人が反論できないのは、
「中也の場合、驚くべきことに本当に、
純粋に真実と美に奉仕していた」からで、
「相手としてはつらい」し、
「だから、中也から離れていかざるを
えなかったんじゃないでしょうか」
と結論するところ、
完璧ですね。

 

また、パチパチパチです。

 

 

 

NHK教育テレビ「知るを楽しむ」
「中原中也 口惜しき人」「第3回 去りゆく友への告白」
10月21日22時25分~22時50分放送。

« 六月の雨/懸賞応募作品 | トップページ | 芥川賞作家・町田康の中也読み/戦士 »

081さまざまな中也体験・中也像」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 芥川賞作家・町田康の中也読み/面倒くさい奴:

« 六月の雨/懸賞応募作品 | トップページ | 芥川賞作家・町田康の中也読み/戦士 »