タバコとマントの恋/相対性理論
佐々木幹郎編「中原中也詩集 山羊の歌」
の「未発表詩篇」にも載っていない
ダダ詩を見ておきます。
「相対界」とあるのがポイントですか
アインシュタインが来日したとき
ダダイスト高橋新吉が
しきりにアインシュタインに関する
「詩的冗談を書き散らした」のが
中也に伝染したらしい。
相対界は
相対性理論の「相対」というわけです。
恋とは、ズバリ!
中也と長谷川泰子の恋、でしょう。
*
タバコとマントの恋
タバコとマントが恋をした
その筈だ
タバコとマントは同類で
タバコが男でマントが女だ
或時二人が身投心中したが
マントは重いが風を含み
タバコは細いが軽かつたので
崖の上から海面に
到着するまでの時間が同じだつた
神様がそれをみて
全く相対界のノーマル事件だといつて
天国でビラマイタ
二人がそれをみて
お互の幸福であつたことを知つた時
恋は永久に破れてしまつた
「中原中也全詩集」(角川ソフィア文庫)
「未発表詩篇」「ダダ手帖(1923年~1924年)」より
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「0011中原中也のダダイズム詩」カテゴリの記事
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未発表詩2編、初見でした。
私も相当、読みこなしたつもりでいましたが
うかつでした。
興味深く読まさせていただきました。
今後の研究、シンパします。
投稿: 春野 | 2008年10月13日 (月) 23時08分
中也に関しては、5割ほどが、大岡昇平一門によって、調べ尽くされ、書き尽くされています。このブログも、大岡昇平によるところ限りないものがありますが、独自の解釈も打ち出したく、色々と工夫し、研究も怠りません。今後とも、シンパサイズの拍手をどうぞ、お願いします。
投稿: 合地 | 2008年10月14日 (火) 12時29分