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2009年1月 6日 (火)

春の歌を拾う<3-1>

「春と赤ン坊」と「雲雀」は、
昭和10年(1935年)の
「文学界」4月号に、
同時に発表された作品です。

長谷川泰子をめぐる
「奇妙な三角関係」は
このころようやく、
少なくとも表面的には
過去形となっており、
また、
その当事者である小林秀雄が、
「文学界」の編集責任者のポジションを得ていたことで
中原中也は、
「文学界」に作品を発表することが容易でした。
小林秀雄のはからいがあったのですが、
中也は、それを大いに利用しました。

この2作品は、
「文学界」に初めて載ったものです。

 *
 春と赤ン坊

菜の花畑で眠つてゐるのは……
菜の花畑で吹かれてゐるのは……
赤ン坊ではないでせうか?

いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です
ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です
菜の花畑に眠つてゐるのは、赤ン坊ですけど

走つてゆくのは、自転車々々々
向ふの道を、走つてゆくのは
薄桃色の、風を切つて……

薄桃色の、風を切つて
走つてゆくのは菜の花畑や空の白雲(しろくも)
――赤ン坊を畑に置いて

 *
 雲 雀

ひねもす空で鳴りますは
あゝ 電線だ、電線だ
ひねもす空で啼きますは
あゝ 雲の子だ、雲雀奴(ひばりめ)だ

碧(あーを)い 碧(あーを)い空の中
ぐるぐるぐると 潜(もぐ)りこみ
ピーチクチクと啼きますは
あゝ 雲の子だ、雲雀奴だ

歩いてゆくのは菜の花畑
地平の方へ、地平の方へ
歩いてゆくのはあの山この山
あーをい あーをい空の下

眠つてゐるのは、菜の花畑に
菜の花畑に、眠つてゐるのは
菜の花畑で風に吹かれて
眠つてゐるのは赤ン坊だ?

(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『在りし日の歌』」より)

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