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2009年1月29日 (木)

空の歌・朝の歌

「朝の歌」は、
小自伝というべき「詩的履歴書」(昭和11年)に、
中原中也自らが、
「大正15年5月、『朝の歌』を書く。7月頃、小林に見せる。それが東京に来て詩を人に見せる最初。 つまり『朝の歌』にてほぼ方針立つ。(略)」
と記すほどに、
詩人としての自信作であり、

「それまでとはまったく違った詩風を示している」
と、大岡昇平も認める
独自の詩を確立した、
画期的作品ということで、
多くの人がそのように
認めてもいる作品です。

この詩を書いたころ、
詩人は
ダダからの脱皮を図っていた
といわれ、
富永太郎や小林秀雄らを
通じて知ることになった
フランス象徴詩の影響も感じられる
この作品に
「空」が見られるのは
早い時期から
「空」を特別扱いしていたのではないか
という想像を推し進めます。

ここでの「空」は
幾分か宗教的ですが
自然の「空」の方が
やや色濃いといえるでしょうか。

二日酔いで目覚めた
詩人が見た
天井に漏れ出でる
朝の光……。

悪友の安アパートへ
泊まり込んでの朝の風景。
だれにも覚えのある
青春の時が
よみがえり
この詩を人気のあるものにしています。

(つづく)

 *
 朝の歌

天井に 朱(あか)きいろいで
  戸の隙を 洩れ入る光、
鄙(ひな)びたる 軍楽の憶(おも)ひ
  手にてなす なにごともなし。

小鳥らの うたはきこえず
  空は今日 はなだ色らし、
倦(う)んじてし 人のこころを
  諫(いさ)めする なにものもなし。

樹脂(じゆし)の香に 朝は悩まし
  うしなひし さまざまのゆめ、
森竝は 風に鳴るかな

ひろごりて たひらかの空、
  土手づたひ きえてゆくかな
うつくしき さまざまの夢。

(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』」より)

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