空の歌・春の日の歌
「春の日の歌」は、
「春の歌」であり、
「空の歌」です。
春の、「空の歌」です。
このように、
季節のある、空の歌というのも
あるのです。
ここには、
空の国?
空のうえ?
と、「?」がついて登場するところが
意味深です。
思わせぶりです。
そんなものあるのかなあ
空の国よ
空の上なんて
そんなものあるかなあ
と、これくらいの意味にとらせておいて
あるんだよ
あるんだよ
空には国があるんだよ
空にはその上があるんだよ、と
詩人は確信しているような空です。
そこには
何があるというのでしょうか。
(つづく)
*
春の日の歌
流(ながれ)よ、淡(あは)き 嬌羞(けうしう)よ、
ながれて ゆくか 空の国?
心も とほく 散らかりて、
ヱヂプト煙草 たちまよふ。
流よ、冷たき 憂ひ秘め、
ながれて ゆくか 麓までも?
まだみぬ 顔の 不可思議の
咽喉(のんど)の みえる あたりまで……
午睡の 夢の ふくよかに、
野原の 空の 空のうへ?
うわあ うわあと 涕(な)くなるか
黄色い 納屋や、白の倉、
水車の みえる 彼方(かなた)まで、
ながれ ながれて ゆくなるか?
(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『在りし日の歌』より)
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