季節のない歌・空の歌4
「山羊の歌」
「在りし日の歌」の
二つの詩集を
一通り読み終えて、
うっすらと、この詩人の像が
浮かび上がってきた、
というところです。
作品を読む中で
人それぞれの魂に見合った歌は
見つかったでしょうか。
まだ、見つかっていないでしょうか。
1行でもいいのです。
1行が見つかれば
それは、その詩に触れたことですし
一つのその詩に出会うきっかけですし
その1行で終わってしまっても
その詩に出会ったと言ってもよい。
宗教詩人
自然詩人
叙情詩人
思想詩人
ダダイスト
……
さまざまな詩人が
浮かび上がってきます。
しかし、詩作品に関して、
ようやく、その3分の1を
読んだに過ぎません。
まだ、レッテルを貼るには
早すぎます。
中原中也には
「生前発表詩篇」
「未発表詩篇」
と分類されている詩作品や草稿が
「山羊の歌」「在りし日の歌」のほかに
およそ200篇あります。
これらを読んでいくことが先決ですし、
最終の目的でもあります。
読んでいくからといっても、
ここでは
学問をしません。
詩を読み
詩を楽しみ
詩を味わう
これが目的です。
さて、おおよその見当ですが、
未読の詩篇、
というのは、
「生前発表詩篇」
「未発表詩篇」ですが、
これを読んでいきますが、
「山羊の歌」
「在りし日の歌」の中で
読み足りなかった作品
読み間違えたと後で気づいた作品
新しい読みをしたくなった作品……など
時には、もう一度読むために、
後戻りしたりしながら、
また、未読作品を読み進める、
といった流れになることを
予想しておきます。
読み方としては、
これまでのように
春夏秋冬でくくれる、とか
月の歌、とか
空の歌、とかと
グループできる作品をまとめて
読んだりもしますが、
その日その時の
行き当たりばったりです。
「空の歌」などというグループが
グループ本来の意味で成立するかどうか
そんなことは、学問に任せておき
「空の歌」を
もう少し突っ込んで読みながら、
そろりそろりと
散歩です。
今回は、
「山羊の歌」中の「朝の歌」を
ここに載せておきます。
「空」に注目して……。
(つづく)
*
朝の歌
天井に 朱(あか)きいろいで
戸の隙を 洩れ入る光、
鄙(ひな)びたる 軍楽の憶(おも)ひ
手にてなす なにごともなし。
小鳥らの うたはきこえず
空は今日 はなだ色らし、
倦(う)んじてし 人のこころを
諫(いさ)めする なにものもなし。
樹脂(じゆし)の香に 朝は悩まし
うしなひし さまざまのゆめ、
森竝は 風に鳴るかな
ひろごりて たひらかの空、
土手づたひ きえてゆくかな
うつくしき さまざまの夢。
(角川文庫クラシックス 佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』」より)
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