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2009年2月 3日 (火)

詩の入り口について/ためいき

「山羊の歌」
「在りし日の歌」を、
春の歌
夏の歌
秋の歌
冬の歌
海の歌
川の歌
山の歌
空の歌
月の歌
雪の歌
雨の歌
鳥の歌
風の歌
花の歌
植物の歌
蛙の歌
虫の歌
猫の歌
草の歌
雲の歌
星の歌
……と、
自分流に再分類していると、

花鳥風月
雪月花
飛花落葉
落花流水
行雲流水
森羅万象
天地玄黄
……
中原中也という詩人は、
色々な自然、
それも身近な自然を
折りあるごとに歌い、
その自然をモチーフにして
その自然よりも他の何かを
色々と歌っているのを
あらためて知ることになります。

この自然を
入り口に見立て
詩の中に入って
行かないという手はありません。

入り口は、そして、
自然ばかりではなく
ほかにも
思いつくだけで、

色がある歌
思い出を歌った歌
倦怠の歌
死の歌
恋愛を歌った歌
女の出てくる歌
長谷川泰子らしい女性の出てくる歌
お道化の歌
詩人論の歌
宗教的な歌
神の出てくる歌
喪失を歌った歌
疎外感を歌った歌
歴史的事件のある歌
歴史的人物が出てくる歌
地名のある歌
献辞のある歌
オノマトペのある歌
……
などと、
いくらでも、
見つけることができそうです。

文語調の歌
定型詩
口語自由詩
ダダイズムの詩
直喩を使った歌
隠喩を使った歌
擬人法を使った歌
七五調
五七調
歌謡調
俗謡調
漢文調
ソネット
北原白秋調
生田春月風
宮沢賢治的
ベルレーヌ風
ランボー的
ボードレール調
……。

「ためいき」は、
「山羊の歌」19番目の歌。
河上徹太郎への献辞が付された作品です。
この作品の入り口を
どこに見つけたらいいか、
あれやこれや、
考えていると、
すでにこの詩の世界に入っていることに
ふと気づき、驚きます。

(つづく)

 *
 ためいき
   河上徹太郎に

ためいきは夜の沼にゆき、
瘴気(しやうき)の中で瞬きをするであらう。
その瞬きは怨めしさうにながれながら、パチンと音をたてるだらう。
木々が若い学者仲間の、頸すぢのやうであるだらう。

夜が明けたら地平線に、窓が開(あ)くだらう。
荷車を挽いた百姓が、町の方へ行くだらう。
ためいきはなほ深くして、
丘に響きあたる荷車の音のやうであるだらう。

野原に突出た山ノ端の松が、私を看守(みまも)つてゐるだらう。
それはあつさりしてても笑はない、叔父さんのやうであるだらう。
神様が気層の底の、魚を捕つてゐるやうだ。

空が曇つたら、蝗螽(いなご)の瞳が、砂土の中に覗くだらう。
遠くに町が、石灰みたいだ。
ピョートル大帝の目玉が、雲の中で光つてゐる。

*瘴気 熱病を起させる毒気。
*ピョートル大帝 ロシア皇帝ピョートル一世(1672―1724)。西欧文化を積極的に取り入れ、絶対主義帝政を確立した。

(佐々木幹郎編「中原中也詩集『山羊の歌』角川文庫クラシックスより)

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