正午丸ビル風景と東京中央郵便局
2009年3月初旬のいま、
時の総務大臣、鳩山邦夫が
東京都千代田区にある
東京中央郵便局の再開発工事現場を
抜き打ちで視察し、
日本郵政が進める
同郵便局の解体工事に
「待った!」をかけている、
というニュースが
マスコミを賑わしています。
はて、さて、
それが、どうした? ということになるのですが、
このニュースを、
中原中也はどのように聞くでしょうか。
問題の東京中央郵便局の隣りあたりに、
旧丸ビルがあったことを
知っている中也の読者は
ただちに
出てくるわ、出てくるわ、のフレーズとともに
東京駅丸の内口に広がっていた風景、
そうです!
丸ビル風景を
思い浮かべていることでしょう。
丸ビルは
何年か前に壊され
新丸ビルが建ち
最近でも、この一帯は
再開発とかで
激変しているところです。
中央郵便局は、
中原中也の詩「正午 丸ビル風景」の
面影を残す風景です。
それが、壊されようとしている、
それに、総務大臣が異議を申し立てている、
というわけです。
ニュースに
中央郵便局の建物が現れるたびに
以下の詩が
重なってみえます。
*
正午
丸ビル風景
あゝ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
月給取の午休み、ぷらりぷらりと手を振つて
あとからあとから出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちやな小ッちやな出入口
空はひろびろ薄曇り、薄曇り、埃りも少々立つてゐる
ひよんな眼付で見上げても、眼を落としても……
なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな
あゝ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちやな小ッちやな出入口
空吹く風にサイレンは、響き響きて消えてゆくかな
(佐々木幹郎編「中原中也詩集『在りし日の歌』角川文庫クラシックスより)
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