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2009年4月 3日 (金)

「曇天」までのいくつかの詩<4>童女

すくすくと乳飲み児(ちのみご)は育ち
片言(かたこと)の言葉を
話すようになっただろうか
よちよち歩きをするようになっただろうか。

 

詩人は
おんも(外)へ
文也を連れ出したことが
きっとあったのでしょう。

 

柔らかな肌は、花粉のようだ
つぶらな瞳は、昆虫のようだ

 

飛行機虫は、
広島方言で松藻虫
奈良方言で源五郎
長野方言であめんぼう
という注が
角川ソフィア文庫版「中原中也全詩集」にあります。

 

カナブンとか、
トンボとか
飛行機を思わせる虫は
いくらでもいますが
中也独特の造語である可能性も
高いことが推測されます。

 

クリンベルトは、
想像できません。
クリーンCLEANなベルトBELTか?

 

押し隠そうとしても
隠しきれない
顔に邪悪なものが見え隠れする
あいつらのいないうちに
眠りなさい
眠れよ、たっぷりと……。

 

飛行機みたいに
飛んでいく虫が見るような
よい夢を見るんだよ

 

この詩もまた
童女に語りかけていながら
詩人自らに語りかけている、
とも、受け取れることができます。

 

 *
 童女

 

眠れよ、眠れ、よい心、
おまへの肌へは、花粉だよ。

 

飛行機虫の夢をみよ、
クリンベルトの夢をみよ。

 

眠れよ、眠れ、よい心、
おまへの眼(まなこ)は、昆蟲(こんちゅう)だ。

 

皮肉ありげな生意気な、
奴等の顔のみえぬひま、

 

眠れよ、眠れ、よい心、
飛行機虫の、夢をみよ。

 

(角川ソフィア文庫版「中原中也全詩集」より)

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