東京市民・中原中也/宵の銀座は花束捧げ
未刊詩篇から
アトランダムに
読んでいきましょう。
草稿詩篇(1933~1936)の
7番目に置かれているのが
タイトル無しの詩篇
(宵の銀座は花束捧げ)です。
詩人によって、
タイトルがつけられていないということは
完成品ではないことを示しますが、
大岡昇平らの角川版全集編集者は
公表に値する草稿、と、
判断したのです。
中也26歳。
元気な詩人です。
花の銀座を歌っています。
珍しく、
屈託の一つもなく
イロニーもなく
東京市民であることの誇りを
一途(いちず)に歌う詩人がいます。
「在りし日の歌」後記に
さらば東京! さらば青春!
と記すまで、
4年ほどの時間があります。
*
(宵の銀座は花束捧げ)
宵の銀座は花束捧げ、
舞ふて踊つて踊つて舞ふて、
我等東京市民の上に、
今日は嬉しい東京祭り
今宵銀座のこの人混みを
わけ往く心と心と心
我等東京住まひの身には、
何か誇りの、何かある。
心一つに、心と心
寄つて離れて離れて寄つて、
今宵銀座のこのどよもしの
ネオンライトもさんざめく
ネオンライトもさざめき笑へば、
人のぞめきもひときはつのる
宵の銀座は花束捧げ、
今日は嬉しい東京祭り
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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