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2009年8月27日 (木)

ダダのデザイン<11>狂気の手紙

誰に宛てた
手紙なのでしょうか?

狂気が
道化の口を借りて
手紙の形で
届けられます。

ぼくは、
気が狂っている者ですが、
袖の振り合いのような人生のこと
あなたさまとも
縁あって、こうして、
お話出来ているというわけですから
聞いてやってください
危害を加えるわけでもありませんから
折角のお楽しみとでも思っていただいてですね
どうか、ぼくの気がおかしくなったところを
とくとご覧になっていただきたく
平に平に
お願い申し上げる次第でございます。

ということで言っておきますが
今回は、気がフーッと抜けました
キンポウゲになっちゃったのですよ
野原のハーブと春の空かな
これといった理由があるんじゃなくて
タンポポとか、煙とかのお仲間になってしまっただけです
このことは一筆お知らせ致します

なお、また近く、
日陰などを見ることがありましたら
(涼しい日がありましたら、か?)
すぐにでも行って、
キセルの羅宇替えや紙芝居のことなど
たっぷりとお話しします
葱や塩のこともたくさんお話しします
いや、地球のことも、
メリーゴーランドのことも、
鉢や火箸のことや……
なんでもお話し申し上げます
では。

 *
 狂気の手紙
袖の振合い他生の縁

僕事、気違ひには御座候(ござさうら)へども

格別害も致し申さず候間

切角(せっかく)御一興とは思召され候て

何卒 気の違つた所なぞ
御高覧の程伏而懇願仕候(ふしてこんがんつかまつりそうろう)

陳述(のぶれば) 此度(たび)は気がフーッと致し

キンポーゲとこそ相成候(あいなりそうろう)

野辺の草穂と春の空

何仔細あるわけにも無之(これなく)処

タンポポや、煙の族とは相成候間

一筆御知らせ申上候

猶(なお)、また近日日陰なぞ見申し候節は

早速参上、羅宇(ラウ)換へや紙芝居のことなぞ

詳しく御話し申上候

お葱(ねぎ)や塩のことにても相当お話し申上候

否、地球のことにてもメリーゴーランドのことにても

お鉢のことにても火箸のことにても何にしても御話申上可候怱々(そうそう)
           (一九三四・四・二二)

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

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