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2010年1月14日 (木)

1931年の詩篇<24>マルレネ・ディートリッヒ

この詩を書いたころ、
長谷川泰子が
小林佐規子の名で
「グレタ・ガルボに似た女性」のテーマで
(東京・新宿の映画館)武蔵野館が募集していた
コンテストに当選します。

グレタ・ガルボは当時、
マレーネ・デートリッヒと並び
世界を二分していたほどの
人気女優で
妖艶な肉体美、脚線美……で
男たちを魅惑していました。

この時は
「インスピレーション」という映画が
上映にかかり、
その封切館である武蔵野館が
キャンペーンをやったというわけです。

中原中也は
泰子の当選を
心から喜べず喜ばず
遠からず近からざる距離から
ヤキモキしていた状態で
この詩を作りましたが、
グレタ・ガルボを
マレーネ・ディートリッヒに
置き換えて歌ったのです。

中也は
あるいは
ガルボよりも
デートリッヒが好みだったのかもしれませんが……

周囲にちやほやされたり
浅はかな言葉に傷ついたりしている
美しいあなたよ
セムの血をひき
アメリカの古曲に聴き入る姿の
なんと美しいあなたよ

そのようなあなたでさえ
浮世の
馬鹿どもの言うことで
苦労なされるなんて
つまらないです
僕には
何もかもが
つまらないです。

世界を風靡している
デートリッヒに呼びかけるなんて
いかにも中也らしいですが
本当の相手は
泰子だったというのが
もっと中也らしいところです

 *
 マルレネ・ディートリッヒ

なあに、小児病者の言ふことですよ、
そんなに美しいあなたさへ
あんな言葉を気にするなんて、
なんとも困つたものですね。

合言葉、二週間も口端にのぼれば、
やがて消えゆく合言葉、
精神の貧困の隠されてゐる
馬鹿者のグループでの合言葉。

それがあなたの美しさにまで何なのでせう!
その脚は、形よいうちにもけものをおもはせ、
あなたの祖先はセミチック、
亜米利加古曲に聴入る風姿(ふぜい)、

ああ、そのやうに美しいあなたさへ
あんな言葉に気をとられるなんて、
浮世の苦労をなされるなんて、
私にはつまんない、なにもかもつまんない。

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

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