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2010年4月29日 (木)

草稿詩篇1933―1936<10>怠惰

1933年(昭和8年)11月はじめ、
中原中也は
郷里山口に帰省、
家族に薦められた見合いにのぞみ
遠縁にあたる上野孝子と結婚します

「怠惰」は、
同年8月10日に制作されましたが、
第3連
叔父さんは僕にいふのだ
「早く持つたほうがいいぜ、
独り者が碌(ろく)なことを考へはせぬ。」
と、あるように、
見合いの話はこの夏以前からあり、
詩人は心の中で
決めていたのかもしれません

夏の帰省中に歌われたのでしょうか
夏の朝

照りつける太陽
燃える空

誰もいない海
光る海

……

東京とは異なる
風景の広がりがある
おおらかな自然の中で
しきりに蝉の声がしていますが
先ほどから
詩人の耳に残るのは
叔父さんの言葉でした

俺も所帯を持つ時期かな
まだ早かろう
詩が書けなくなりはしないか
いや
暮しの中でだって詩は書ける
いや
いや
……

俺は
まだ怠惰から逃れられない
怠惰にケリをつけていないし
……

夏の朝よ
蝉よ
海よ

俺は
まだ
寝ころんでいたいのだよ
怠惰が抜けないのだよ
目をつむって一人
蝉の声を聞いていたいのだよ

森の方……

何か
言い残して
詩は終わります

海でも空でも太陽でもなく
森の方……
と言い残して

 *
 怠惰

夏の朝よ、蝉よ、
砂に照りつける陽よ……
燃えてゐる空よ!

今日は誰も泳いでゐない、
赤痢患者でもあつたんだらう?
海は空しく光つてゐる。――風よ……

叔父さんは僕にいふのだ
「早く持つたほうがいいぜ、
独り者が碌(ろく)なことを考へはせぬ。」

それどころか、……夏の朝よ、蝉よ、
むかふにみえる、海よ、
僕は寝ころびたいのだよ、

目をつむつて蝉が聞いてゐたい!――森の方……
         (一九三三・八・一〇)

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

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