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2010年5月 3日 (月)

草稿詩篇1933―1936<21>朝(雀が鳴いてゐる)

「朝(雀が鳴いている)」は
「朝(かゞやかしい朝よ)」とともに
1933年11月初旬に
山口帰省中に作られたと推定される作品。

詩人は
この帰省中に
見合いの末
結婚しました

もう少し具体的に言えば
11月2日ごろ山口に帰り
遠縁の上野孝子と見合いし
12月3日に結婚式を挙げました

見合いをする前に
詩人はすでに
結婚を決めていた節があり、
11月初旬に制作された「朝」2篇には
ともに
そのことの反映が
見つかるかもしれません

そうしたことを意識して
この詩を読もうと
読むまいと
この詩がもつ謎のようなフレーズのいくつかからは
想像力をかきたてるに十分な
刺激的な匂いが
はなたれています

私は椿の葉を想ふ
という1行は
その一つですが

恋人よ、親達に距(へだ)てられた私の恋人、
という1行が含まれる
第3連全体は
何を意味しているだろうか

回りくどい言い方はやめて
この恋人とは
長谷川泰子のことではないのか
と、問わない手はありえません

この詩の恋人が
長谷川泰子である可能性は
ないとは言えず
永遠に可能性として残るだけですが
万が一
彼女であるとすれば

雀が鳴いてゐる
という1行
朝日が照つてゐる
という1行
……

私は椿の葉を想ふ
という1行も
……

詩が
ひっくり返るような
転換が起こります

だれが
それを決めるのか
といえば
これを作った詩人に聞けばわかるのですが
それができないのなら
この詩が決めるのですから
何度も何度も
詩を読んでみるほかにありません

私は
いま
寝床の中にいます

それ以外は
詩人の脳裏を去来し
胸中をめぐるものです

 *
 朝

雀が鳴いてゐる
朝日が照つてゐる
私は椿の葉を想ふ

雀が鳴いてゐる
起きよといふ
だがそんなに直ぐは起きられようか
私は潅木林の中を
走り廻る夢をみてゐたんだ

恋人よ、親達に距(へだ)てられた私の恋人、
君はどう思ふか……
僕は今でも君を懐しい、懐しいものに思ふ

雀が鳴いてゐる
朝日が照つてゐる
私は椿の葉を想ふ

雀が鳴いてゐる
起きよといふ
だがそんなに直ぐは起きられようか
私は潅木林の中を
走り廻る夢をみてゐたんだ

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

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