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2010年8月21日 (土)

草稿詩篇1925-1928<10> 春の雨

幻となった第一詩集には
タイトルらしきものの候補が
詩人によって日記の中にメモされて残っています

昭和2年3月9日の日記に
「題なき歌」
「無軌」
「乱航星」
「生命の歌」
「浪」
「空の歌」
「瑠璃玉」
「青玉」
「瑠璃夜」
などが記され

ほかにも
日記帳の裏表紙に
「無題詩集」
「空の餓鬼」
「孤独の底」
と記され
詩人の筆名らしき「深川鉄也」というメモも見られる、
ということです

また、
大岡昇平は
やがて「山羊の歌」第2章の章題となる
「少年時」を幻の第一詩集のタイトルと
推定しています
(新全集第一巻・詩Ⅰ解題篇)

「春の雨」は
原稿用紙に清書された
昭和2―3年制作(推定)の作品で
この清書は
幻となった第一詩集のためのものと
考えられています
第1連にある「胸ぬち」は
「胸の内」の意味

詩人の歩行は続けられ

昨日は喜び、今日は死に、
明日は戦ひ?……

と歌われるのは
酒交じりの席での意気投合や
論争や口論や取っ組み合い(?)の日々が
明日も続くかと恐れる気持ちの発露でしょうか

詩をめぐる談論風発ならまだしも
そこに
「愛」はなかったものでしょうか

酔いを回して歌えば心地よく
弁舌を聞かせれば心苦しく
春の夜に
詩人の心は切り裂かれ
こんなんじゃないやい
ぼくを愛する人よ、やって来いやい

喜びをともにしよう
恋人よ 友よ

ぼくの心が狭いばかりに
怒りがどうも先に立つ

その上
こんな時だというのに雨だ雨だ
ああ 雨の音だ

 *
 春の雨

昨日は喜び、今日は死に、
明日は戦ひ?……
ほの紅の胸ぬちはあまりに清く、
道に踏まれて消えてゆく。

歌ひしほどに心地よく、
聞かせしほどにわれ喘(あえ)ぐ。
春わが心をつき裂きぬ、
たれか来りてわを愛せ。

あゝ喜びはともにせん、
わが恋人よはらからよ。

われの心の幼くて、
われの心に怒りもあり。

さてもこの日に雨が降る、
雨の音きけ、雨の音。

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

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