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2010年9月21日 (火)

ノート小年時(1928―1930) <11>頌歌

「頌歌」は
「夏の海」の3日後の
昭和4年(1929年)7月13日に作られました
詩末尾に日付が記されています

この月末に
北豊島郡長崎町1037黒沢方から
豊多摩郡高井戸町中高井戸37の
高田博厚のアトリエ近くに転居する詩人ですから
小さな旅立ちを
自ら祝う気持ちが生まれたのでしょうか

それとも
「白痴群」がなんとか軌道にのり
第2号を発行し、
第3号への準備で
なにかを称賛したく思うことができたのでしょうか

それとも
その逆の気持ちがあって
それを鎮めるために
自らを鼓舞する詩を歌ったのでしょうか

それとも
これはやはり
詩人のアイデンティティーを
自らに問うた結果の歌なのでしょうか

それとも
ほかに理由があったのでしょうか

「自由」を
詩人が使ったのは
この詩「頌歌」が
ダダ詩以外では
きっと初めてのことです

夏の夜ですから
霧と野と星の世界へ
旅立とう!
一人して
身も世も軽くなって
旅立とう!

一人であるということの
ああ、なんという自由!
信仰心なき世の中のいさかいも
おしゃべりや御託ばっかりの思想も放ってしまって
真底身に沁みる空の中へ行こう
(この「空」には、神が込められているはずです)

悲しみと喜びとを
つつましくそして豊かに
歌いましょう古き調べにのせて

霧と野と星とともに
歌いましょう、夏の夜は
ひとりで
古くからあたためてきた思いを
存分に歌いましょう
……

頌歌は
歌うことの自由の歌であり
歌うことの決意表明の歌でもありそうです

 *
 頌 歌

出で発(た)たん!夏の夜は
霧と野と星とに向つて。
出で発たん、夏の夜は
一人して、身も世も軽く!

この自由、おゝ!この自由!
心なき世のいさかひと
多忙なる思想を放ち、
身に沁みるみ空の中に

悲しみと喜びをもて、
つつましく、かつはゆたけく、
歌はなん古きしらべを

霧と野と星とに伴(つ)れて、
歌はなん、夏の夜は
一人して、古きおもひを!
    (一九二九・七・一三)

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

Senpuki04
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