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2010年11月24日 (水)

生前発表詩篇を読む続編   <31>道修山夜曲

「道修山夜曲」は
「未発表詩篇」にも収録されていますから
そちらで
一度読みました

療養中とはいえ
詩のお手本のような
詩法の見事な実践に出会います

一筆書き(いっぴつがき)でありながら
詩の技法のエキスがほとばしるような。

以下は
2010年4月9日の記事の再録です
あくまで第一次形態の詩についての案内であることをお断りしておきます
(※作品は、「黎明」掲載の第二次形態です)

「道修山夜曲」の道修山(どうしゅうざん)は
(丘の上サあがつて、丘の上サあがつて)の
「丘」と同一の丘陵のことで
療養所が建っていた場所です

末尾に(一九三七・二・二)の日付があり、
(丘の上サあがつて、丘の上サあがつて)が書かれて
3日後に制作されたことがわかります
詩人の回復はめざましく
閉鎖病棟の精神科から
開放病棟の神経科へ移った翌日の作品です

中原中也が
中村古峡療養所に入院中に
書き残したものは、
「療養日誌」のほかに
「千葉寺雑記」があり、
詩人自らが作ったこの雑記帳に
「道修山夜曲」は記されました

この詩は
「黎明」という、
療養所発行の月刊誌の
昭和12年4月号に掲載された
作品の第一次形態です
「生前発表詩篇」にも分類・所収されていますが、
両作品の違いは
句読点の有無だけの
わずかなものです

満天の星が降り注ぐ
快晴の日の夜だったのでしょう
道修山にあった松林に入り、
下草の生えるあたりにしゃがんで
耳を澄ませば
聞こえてくる汽車の音……

その他には
なにも聞こえてこない……
松には今夜風もなく、 
土はジツトリ湿つてる。 
遠く近くの笹の葉も、 
しづもりかへつてゐるばかり。
静かな夜でした

静かな夜を
たまたま通った汽車に
「外界」への思いを馳せたのですが
すぐさま
沈黙の世界が戻ります
ここは
道修山……
山の上なのです

しかし
それ以上のことを
詩人は歌いませんでした


 道修山夜曲

星の降るよな夜(よる)でした
松の林のその中に、
僕は蹲(しやが)んでをりました。

星の明りに照らされて
折しも通るあの汽車は、
今夜何処(どこ)までゆくのやら。

松には今夜風もなく
土はジツトリ湿つてる。
遠く近くの笹の葉も
しづもりかへつてゐるばかり。

星の降るよな夜でした、
松の林のその中に
僕は蹲んでをりました。
        ―― 一九三七、二、二――

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

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