ダダ詩「ノート1924」の世界<1-2>春の日の怒・再
ひょっとして
「春の日の怒」の第1連は
起承転結の伝統を踏んでいるのかもしれません
起:田の中にテニスコートがありますかい?
承:春風です
転:よろこびやがれ凡俗!
結:名詞の換言で日が暮れよう
と読めるのかもしれません
その流れに沿って
読んでみるとどうなりますか
……
田んぼの中にテニスコートでもあるというのかい?
そりゃまた愉快な!
春風が吹いてくるね
春だね
冗談ばっかりいって
カマボコはオトトだなんて
みんな喜んでいりゃいいさ
名詞の取り替えっこして
1日が暮れていけばいいんだ
ここまでは
そう無理ではなさそうですが
……
第2連は
起承転結じゃなくて
起承転々ってことになりますか
凡人は
1連に出てくる凡俗と同じですから
繋がっています
凡人は
特定の個人なのではなく
ゾロゾロゾロゾロ
街を歩いているのでした
京都の街を行き交っている
群集を
詩人は
自らも
群集の人でありながら
観察しているのです
なんとまあ
色々な人間がいるものだ!
と思ったのか
なんとまあ
同じような顔をしているもんだ!
と思えたのか
毎日毎日歩き回っている街に
倦み疲れてはいるものの
詩人の目を楽しませるものは
次から次に現れるので
群集の波の中を
歩き続けます
1924年の春のある日
石版刷りの上等なポスターが
めくれあがって
中に描かれた
子ども向けの木下駄が
カランコロンと
春が怒ったような
のんびりとした音を立てました
こんな読みも
可能かもしれません
木履=ぽっくりが
長谷川泰子のものとすれば
読みは
また変化し
深まります
*
春の日の怒
田の中にテニスコートがありますかい?
春風です
よろこびやがれ凡俗!
名詞の換言で日が暮れよう
アスファルトの上は凡人がゆく
顔 顔 顔
石版刷りのポスターに
木履の音は這ひ込まう
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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