ダダ詩「ノート1924」の世界<4>(天才が一度恋すると)
4番目の
(天才が一度恋すると)は
詩人によるタイトルは付けられてなくて
未完の詩です
断片といってもよい
完成されていない
息のようなもの
詩人は
やがて
この呼吸の一息(ひといき)を
詩の切れ屑(きれくず)と呼んで
散策の目的にします
今はまだ
そのような切迫さに
追われているとはいえませんが
断片には
むき出しになる
詩の原形が見られます
ここに歌われている
恋とかは
もうすでに
詩人の未来の恋を
自ら予言するものであるかの
伝記の序章のようです
詩人は
やがて
恋愛詩の絶唱を
数多く歌うことになるのですが
それは
自叙伝のように
過去のことや
のんびりしたものや
家族のことなどを含まない
今のことについてばかりの
日記のようなものになりました
考えることが
なんでもかんでも
泰子につながっていってしまうのです
*
(天才が一度恋すると)
天才が一度恋すると
思惟の対象がみんな恋人になります。
御覧なさい
天才は彼の自叙伝を急ぎさうなものに
恋愛伝の方を先に書きました
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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