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2011年3月31日 (木)

ダダ詩「ノート1924」の世界<20>(テンピにかけて)

テンピとは
オーブンを意味する天火のことか
太陽の光を意味する天日のことか
どちらも強い火に通じますから
どちらでもよいようですが
やっぱり
天火かな

こいつで
あのへなちょこ野郎が作った詩なんか
焼いてやろかって
啖呵(たんか)をきっている詩です

百科辞典から引っ張ってきた
死んだ言葉を並べ立て
鳥だ花だって
珍しい名前ばかりを連呼して
見たことも聞いたこともないクセに
見たような聞いたようなウソばっかり書きやがって
――想像力があるならまだしもね
やいやい
何が表現できたのですか?

破格もなければ
破調もない
自己を棄てていない
我ばっかり主張している詩ってのは
神の詩か
凡人の詩か
どっちかだって
この僕が決めてあげるさ

次第に
絞られてきている感じです
なにしろ
詩を書く人間を批判しているのですから
中学校4年の中原中也の
交友関係を調べれば
おおよその見当はつくというものですが
誰だっていいじゃないですかね

詩人は
このように批判したような詩を
作ろうとはしなかったのです
それがわかれば
いいじゃないですか

ダダの技法はどこへやら
吹き飛んでいってしまうほど
書きたかったのですね
ストレートに過ぎる詩です
技がありません

タイトルをつけていない
未完成品ですから
もっともですが。

 *
 (テンピにかけて)

テンピにかけて
焼いたろか
あんなヘナチヨコ詩人の詩

百科辞典を引き廻し
鳥の名や花の名や
みたこともないそれなんか
ひつぱり出して書いたつて
――だがそれ程想像力があればね――
やい!
いつたい何が表現出来ました?

自棄(やけ)のない詩は
神の詩か
凡人の詩か
そのどつちかと僕が決めたげます

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

Senpuki04
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