ダダ詩「ノート1924」の世界<10>初恋
すべての人間は死すべきものである。
ソクラテスは人間である。
ゆえにソクラテスは死すべきものである。
というのが
三段論法というのならば
「初恋」で示された論理は
反三段論法とでもいうのでしょうか
無論理没論理非論理でしょうか
それとも
もっと他の
詭弁とか屁理屈とか
矛盾とか
循環論理とか
弁証法とか
飛躍とか
韜晦とか
目くらましとか
詐術とか
魔術とか
……
それとも
逆もまた真なり
という論理なのでしょうか
初恋を説明するのに
論理もヘッタクリもないのに
しつこく論理的であろうとするところに
初恋の青っぽい甘味があるともいえますが
どこか得意気な調子が
ほほえましいダダ詩ですね。
*
初恋
最も弱いものは
弱いもの――
最も強いものは
強いもの――
タバコの灰は
霧の不平――
燈心は
決闘――
最も弱いものが
最も強いものに――
タバコの灰が
燈心に――
霧の不平が
決闘に
嘗(かつ)てみえたことはありませんでしたか?
――それは初恋です
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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