ダダ詩「ノート1924」の世界<13>初夏
By freezr
高橋新吉は
「ダダイスト新吉の詩」の
冒頭の作品「断言はダダイスト」で
DADAは一切を断言し否定する
無限とか無とか
それはタバコとかコシマキとか単語とか同音に響く
想像に湧く一切のものは実在するのである
と歌っています
このフレーズで
思い出すことになるのが
「初夏」。
この詩の最終行の
恋し始める頃ですね
だけが
まっとうな意味があって
ほかの詩句は
タバコとかコシマキとか……
いくらでも
入れ替え可能。
たまたま
異なって発音されているだけで
みんな
実在することに変わりはありません。
新聞紙が絹の風呂敷を包んだって
その逆だって
どっちだっていいさ
月が風に泳ぐのか
風が月に泳ぐのか
それも同じことさ
どっちだっていいのさ
スターズ・アンド・ストライプスがソーダ水を飲むのか
ソーダ水がスターズ・アンド・ストライプスを飲むのか
飲むのも
飲まれるのも
おんなじこっちゃ
恋なのだもん
*
初夏
扇子と香水――
君、新聞紙を絹風呂敷には包みましたか
夕の月に風が泳ぎます
アメリカの国旗とソーダ水とが
恋し始める頃ですね
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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