ダダ詩「ノート1924」の世界<15>迷つてゐます
「迷つてゐます」は
少なくとも
詩人が
このタイトルを付けた作品です。
もう
ほとんど
嘘じゃない
飾っていない
赤裸々に
ストレートに
自分をさらけ出しています。
迷っています
というのは
本当のことなのでしょう
掛け値なしに
詩人は迷っているのです
それも
恋のために
性欲のために
筆は
性欲の反対物です
性欲に
筆が
折れそうになっています
それを
詩人は
隠そうともしません
*
迷つてゐます
筆が折れる
それ程足りた心があるか
だつて折れない筆がありますか?
聖書の綱が
性欲のコマを廻す
原始人の礼儀は
外界物に目も呉れないで
目前のものだけを見ることでした
だがだが
現代文明が筆を生みました
筆は外界物です
現代人は目前のものに対するに
その筆を用ひました
発明して出来たものが不可なかつたのです
だが好いとも言えますから――
僕は筆を折りませうか?
その儘にしときませうか?
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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