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2011年3月29日 (火)

ダダ詩「ノート1924」の世界<18>(題を附けるのが無理です)

中原中也の作品で
未発表のもののうち
題名のない作品は
( )の中に
詩の一行目の詩句を入れて
仮題とする習慣になっているのですが

(題を附けるのが無理です)は
詩人自らが
( )をつけて詩題とした
珍しい例で
この例のほかにはありません

(題を附けるのが無理です)は
詩題なのです。
仮題とは区別して考えたほうがよいということです。
「無題」というタイトルがありますが
それとも異なります。

ダダ的な遊びというより
遊び過ぎて
収拾がつかなくて
タイトルをつけたいのだけれど
いろいろなタイトルが浮んできて
どれにしてよいのか
わからなくなってしまって
でも内容には捨てがたいものがあるので
(題を附けるのが無理です)と
しておいた

いつか機会があれば
内容ともども
練り直すこともあるだろう

そんな感じで
記録しておいた作品かもしれません

だれだかわからない
明らかに泰子ではない
誰かに
呼びかけたり
忠告したりしていることが
理解できるのですが

第2連の
誰です
法律ばかり研究してるのは

の、誰ですは、誰のことか

第3連の
そればかりみてゐても
金の時計が真鍮(しんちゅう)になりますぞ

の、みているのは誰のことか

第4連の
あんまりいたづらは不可(いけ)ません

の、いたづらしているのは誰なのか

最終連の
君のステッキは
何といふ緊張しすぎた物笑ひです

の、君とは誰のことなのか

これらの
正体不明の主格は
一人なのか
複数いるのか
まったくわかりません


わからなくても
何かを言いたい相手があって
遠まわしにというか
ダダイスティックにというか
言いたかったのでしょうね

題をつけると
歌った相手を特定できてしまうので
プライバシーを侵害し
名誉毀損の恐れもあるから
題をつけるわけにはいきません
とふざけてみたかったのかな

まさか
この相手が泰子であるとは思えませんから
泰子以外の人物が登場したことだけでも
目新しい内容ということになります

第3連。
林檎の皮が
電灯の光を受けて
光っている
その外面だけが光っているのばかりを見て
感動したり感心したりしていると
(中身に関心を向けないで、上っ面ばかりみていると)
金の時計も真鍮になってしまうよ
(せっかくの金時計も安物の真鍮時計になってしまうよ)

などと
忠告してあげたい誰かが
いたのでしょうか

他の連も
第1連を除いて
誰かへの批判・非難・忠告の類でしょうが
第1連は
これらはみんな
トランプ占いの結果だという断りなのでしょうか
トランプ占いの結果なのだから
あまり目くじら立てて
怒ったりしないでね
予めご了承くださいっていう
お断りなのでしょうか

立命館中学の学友を
観察しての
アドバイスであるなら
詩人の近辺が
少しリアルに伝わってくる詩といえるかもしれません

 *
 (題を附けるのが無理です)

トランプの占ひで
日が暮れました――
オランダ時計の罪悪です

喩(たと)へ話の上に出来た喩へ話――
誰です
法律ばかり研究してるのは

林檎の皮に灯が光る
そればかりみてゐても
金の時計が真鍮(しんちゅう)になりますぞ

寺院の壁にトンボがとまつた
それは好いが
あんまりいたづらは不可(いけ)ません

法則とともに歩く男
君のステッキは
何といふ緊張しすぎた物笑ひです

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

Senpuki04
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