ダダ詩「ノート1924」の世界<11>想像力の悲歌
蝶々は
夕方になると
翅(はね)を休めに木蔭へ降り立ちます。
少年時代に
野原で遊んだ観察眼が
ダダ詩に生きています
陽光の下で
軽快に飛び回る蝶の
思いのほかの翅休めが
恋の喩(たとえ)になったのです
こんなこと
予想だにしなかった!
恋するなんて。
街の
お笑い者の爺さんは
赤茶けた
麦藁帽をアミダにかぶって
ハッハッハって
わかったように笑ってみせたがね
夢魔なんてこと
あるのかいなってね
*
想像力の悲歌
恋を知らない
街上の
笑ひ者なる爺やんは
赤ちやけた
麦藁帽をアミダにかぶり
ハッハッハッ
「夢魔」てえことがあるものか
その日蝶々の落ちるのを
夕の風がみてゐました
思ひのほかでありました
恋だけは――恋だけは
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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