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2011年3月 9日 (水)

ダダ詩「ノート1924」の世界<11>想像力の悲歌

蝶々は
夕方になると
翅(はね)を休めに木蔭へ降り立ちます。

少年時代に
野原で遊んだ観察眼が
ダダ詩に生きています

陽光の下で
軽快に飛び回る蝶の
思いのほかの翅休めが
恋の喩(たとえ)になったのです

こんなこと
予想だにしなかった!
恋するなんて。

街の
お笑い者の爺さんは
赤茶けた
麦藁帽をアミダにかぶって
ハッハッハって
わかったように笑ってみせたがね

夢魔なんてこと
あるのかいなってね

 *
 想像力の悲歌

恋を知らない
街上の
笑ひ者なる爺やんは
赤ちやけた
麦藁帽をアミダにかぶり
ハッハッハッ
「夢魔」てえことがあるものか

その日蝶々の落ちるのを
夕の風がみてゐました

思ひのほかでありました
恋だけは――恋だけは

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

Senpuki04
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