ダダ詩「ノート1924」の世界<14>情欲
ある一つのフレーズが
次行につながっていかなくとも
ダダならOK
前後左右の脈絡を
わざと破壊し
時系列をさかさまにしたり
1行1行を断片にしたりして
はじめて
1行1行の
独立性を高める
何故取れない!って
何が取れないのかなんて
目くじら立てたって
しようもない
何故取れない!って
何か取れないことがあるのだな
男と女のことで
「取れない」何かがあって
それを
何故取れない!と
否定形の
感嘆符付きで
苛立っているのか
嘆いているのか
驚いているのか
困っているのか
あてづっぽうだけれども
「取れない」ものが何であるか
大体のところは見当がついてきます
電球が何の喩であるか
冬の野原が何の比喩であるか
夏の風が何を示す暗喩であるか
そこいらも
大体のところは見当がつきます
それはズバリ
情欲がらみ
煙も
情熱の火も
その突進も
ブツカルも
みんな情欲がらみ
それは
昔からあったものなのに
今新たに芽生えたのです
これも情欲がらみ
どうしてくれるんだい
(知らんぷりして)横目で見て
しかとしてるな泰子!
いやいや
だれの罪でもない
(情欲は自然)
必要というものでもない
(なんとか自制できるさ)
欲しいだけ
欲しい
欲しい
欲しい
欲しい
欲しい
欲しい
……
オマエガホシイ
*
情 欲
何故取れない!
何故取れない!
電球よ暑くなれ!
冬の野原を夏の風が行くに
煙が去つた
情熱の火が突進する
ブツカルものもなく――
だから不可(いけ)ない
昔からあつたものだのに
今新たに起つたものだ
それを如何(どう)して呉(く)れるい
横から眺めてゐるな
誰の罪でもない
必要じやない
欲しいだけだ
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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