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2011年4月13日 (水)

ダダ詩「ノート1924」の世界<30> (ツツケンドンに)

「つっけんどん」という言葉が
「けんもほろろ」という言葉の「けん」の意味を
広辞苑で引いていたときに
出てきて驚いたのですが
「突慳貪」と書くそうです。

けんもほろろは
雉(きじ)の鳴き声を表わす擬音語だそうですから
「けん」は「剣」ではないことがわかったのですが
同時に
「つっけんどん」と「けんもほろろ」は
同義語・同類語であることもわかったわけです

鳥のキジ(=雉)が
つっけんどんな仕草をする感じが
なんとなく想像できるではありませんか!

ツツケンドンに
女は言ひつぱなして出て行つた

この女は
いうまでもなく
泰子でしょうが
彼女がキジのように思えるところは
意図されたものではないのにかかわらず
イメージの連鎖が生じることになり
絶妙な技を感じます。

泰子に
そっぽを向かれた詩人が
自分にだけ通じる言葉で
自分を納得させている

たまには
神様を悪く言ったりもして
強気でいるけど
隠し切れない
淋しさ……

 *
 (ツツケンドンに)

ツツケンドンに
女は言ひつぱなして出て行つた

襖(ふすま)の上に灰がみえる
眼窩(がんか)の顚倒
鳥の羽斜に空へ!……

対象の知れぬ寂しみ
神様はつまらぬものゝのみをつくつた

盥(たらい)の底の残り水
古いゴムマリ
十能が棄てられました

雀の声は何といふ生唾液(ナマツバキ)だ!
雨はまだ降るだらうか
インキ壷をのぞいてニブリ加減をみよう

※原作は、「ニブリ」に傍点が付いています。(編者注)

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

Senpuki04
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