ダダ詩「ノート1924」の世界<39>(不随意筋のケンクワ)
(不随意筋のケンクワ)も
未完成の断片ながら
独立した詩篇と認められている
詩の切れ屑、断片です。
「ケンクワ」は
歴史的仮名遣いを
わざとカタカナにしているのでこうなりますが
現代仮名にすると「けんか」
漢字にすれば「喧嘩」です
意識してやろうともしていないのに
やってしまう喧嘩とは
泰子とのことでしょうか
ほかのだれかとの喧嘩でしょうか
記せば、ハイフンにしかならない
平凡で単調で退屈な
省略可能な暮らし
△が○を描いて
――などなど
(目の覚めるような生活をしたい)
ああ
水蜜桃を欲しがっている
(俺の身体は)
魔都上海や帝都東京――
花の都巴里を散策するベルレーヌやランボー――
富永太郎が聞かせる
ひときわ魅惑に満ちた話の数々は
ダダイストの身を乗り出させるに十分でした
俺もパリへ行こう
いや、
ひとまずは東京へ行こう
詩人は
心の中では
すでにこの気持ちが芽生えていることを
自覚していたのかもしれません
今は、しかし
その代わりに
水蜜桃を食べたい
とだけ小さな声で叫んでおこう
*
(不随意筋のケンクワ)
不随意筋のケンクワ
ハイフェンの多い生活
△が○を描いて――
あゝスイミツトーが欲しい
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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