ダダ詩「ノート1924」の世界<35> (成程)
第1連第2行の
共に発見すること、とは
前作(概念が明白となれば)の
反省は詠嘆を生むばかりです
自分と過去とを忘れて
他人と描ける自分との
恋をみつめて進むんだ
を受けたのならば
二人は
かなり一致できる線にいたと思えるのですが
微妙にそうではなく
さうか、それでは俺には恋は出来ない
と、詩人は言わざるを得ません
お前を知る前にすでに
お前がやがて発見することを
俺は発見してしまっていたから
一つの菓子を
二人が好むなんてことはない
(そんなふうに一致できるわけがない)
一人はある一つの菓子を好きだけど
一人はその一つの菓子を嫌いなのは当たり前
菓子をめぐっての三角関係になるのが自然
菓子は二人のうちの一人から妬かれて幸せ者さ
こうなるのは
一番よくあるバランスへの運動なのに
なぜそのバランスがやってこないのか
ヘアー香水がまだ胸に残っている
(と男が思えば)
煙草の香りが胸に残っているかしら
(と女が思う)
蛙が一斉に鳴いて
一切が黄疸で黄色くなっちゃってらあ
悲しい
悲しい
なぜここがオーダンなのか
当時の流行病だったのか
冒頭の
共に発見することが楽しみなのか
への落ちとして
ダダっぽくまとめられましたが
オーダンのニュアンスが
現代には通じにくいかもしれません
*
(成程)
成程
共に発見することが楽しみなのか
さうか、それでは俺には恋は出来ない
お前を知る前概に
お前の今後発見することを発見しつくしてゐたから
一つの菓子を
二人とも好んではゐない
一人は大好きで一人が嫌ひです
菓子と二人との三角関係
菓子は嫌ひな一人からヤカレて仕合せ者だ
一番平凡なバランスの要求だのに
何故そのバランスが来ないのか
髪油の香が尚(なお)胸に残つてゐる
煙草の香が胸に残つてゐるかしら
蛙が鳴いて
一切がオーダンの悲哀だ
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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