「むなしさ」からはじまる<2>
「むなしさ」が作られたのは
大正15年(1926年)2月、
とする説が有力ですが
昭和26年発行の「創元社版全集第3巻」所収の「年譜」には
そのように制作日が記されてあるものの
同全集の編集・発行後に
元になったその原稿が紛失したため
印刷された制作日を信ずるほかになく
確定できるものではない
――と、新全集は慎重な見解です。
「創元社版全集」の記載が間違えることは
よほどのことがない限り
まずはないはずですから
「むなしさ」は
大正15年2月制作として
実際には認知され流布しています。
中原中也、長谷川泰子と手を携えて上京後1年。
上京後半年した頃
泰子は小林秀雄と暮らすことになり
独居生活がはじまりました。
そのさらに半年後の制作ということになります。
大正15年は1926年で
12月24日に大正天皇が崩御されて
翌日には昭和と改号された年です。
25日以降の7日間が
昭和元年で
昭和2年、1927年がすぐにはじまりました。
詩人の誕生日は4月29日ですから
「むなしさ」を歌った1926年2月は
まだ18歳ということになります。
(つづく)
*
むなしさ
臘祭(らふさい)の夜の 巷(ちまた)に堕(お)ちて
心臓はも 条網に絡(から)み
脂(あぶら)ぎる 胸乳(むなち)も露(あら)は
よすがなき われは戯女(たはれめ)
せつなきに 泣きも得せずて
この日頃 闇を孕(はら)めり
遐(とほ)き空 線条に鳴る
海峡岸 冬の暁風
白薔薇(しろばら)の 造花の花弁(くわべん)
凍(い)てつきて 心もあらず
明けき日の 乙女の集(つど)ひ
それらみな ふるのわが友
偏菱形(へんりようけい)=聚接面(しゆうせつめん)そも
胡弓(こきゆう)の音 つづきてきこゆ
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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