カテゴリー

2023年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

« 「むなしさ」からはじまる<8> | トップページ | 「むさしさ」からはじまる<10> »

2011年6月15日 (水)

「むなしさ」からはじまる<9>

「むなしさ」は当初
第2詩集「在りし日の歌」の冒頭詩篇でしたが
詩集編集の間に
長男の文也が急死したために
「含羞(はぢらひ)」に取って変えられました。

 

それまで
すなわち昭和11年(1936)11月10日に
文也が死ぬまでは
「むなしさ」が「在りし日の歌」の冒頭に置かれていたのですが
詩集編集は一時中断し
この中断の間には
詩人自身が千葉の中村古峡療養所へ
入退院するというハプニングもあって
再び開始されるのは
翌12年の夏になってからですから
再開されたこの詩集編集の時に
「含羞」を冒頭詩篇とする改編が行われたということが
角川新全集編集により考証されているのです。

 

こうして
「在りし日の歌」を
中原中也は「在りし日」に手に取ることもなく
文学仲間である小林秀雄に託してすぐに
他界してしまいます。
昭和12年10月22日のことです。
長男文也の死亡から
1年余の後のことでした。

 

このため、
「在りし日の歌」は「著者校正」が行なわれなかった
稀有な詩集ということにもなります。

 

 

 

 *
 むなしさ

 

臘祭(らふさい)の夜の 巷(ちまた)に堕(お)ちて
 心臓はも 条網に絡(から)み
脂(あぶら)ぎる 胸乳(むなち)も露(あら)は
 よすがなき われは戯女(たはれめ)

 

せつなきに 泣きも得せずて
 この日頃 闇を孕(はら)めり
遐(とほ)き空 線条に鳴る
 海峡岸 冬の暁風

 

白薔薇(しろばら)の 造花の花弁(くわべん)
 凍(い)てつきて 心もあらず

 

明けき日の 乙女の集(つど)ひ
 それらみな ふるのわが友

 

偏菱形(へんりようけい)=聚接面(しゆうせつめん)そも
 胡弓の音 つづきてきこゆ

 

(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)

 


にほんブログ村:「詩集・句集」人気ランキングページへ
(↑ランキング参加中。ポチっとしてくれたらうれしいです。)

« 「むなしさ」からはじまる<8> | トップページ | 「むさしさ」からはじまる<10> »

001はじめての中原中也/ダダ脱皮」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「むなしさ」からはじまる<9>:

« 「むなしさ」からはじまる<8> | トップページ | 「むさしさ」からはじまる<10> »