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2011年10月16日 (日)

中原中也が訳したランボー「感動」Sensation

「感動」Sensationは
中原中也訳「ランボオ詩集」の冒頭詩篇です。

「ランボー詩集」は数多くの翻訳があり
それぞれの翻訳の原典によって
冒頭に置かれている詩篇は異なります。

ランボーは
「ランボー詩集」を残したわけではなく
後世の研究者らがテキストを考証・校訂してまとめたものですから
それぞれの考証・校訂に異同が生じるのは
止むを得ないことなのです。

結果、長い間にはいくつかの
「ランボー詩集」が
いくつかの出版社によって発行され
それらが世界各国で翻訳されれば
さまざまな「ランボー詩集」が生まれて当然です。

中原中也が使った第2次ペリション版(1924年発行メルキュル版)では
冒頭にある詩篇は
「感動」です。

私は行こう、夏の青き宵は
麦穂臑(すね)刺す小径の上に、小草(おぐさ)を踏みに
夢想家・私は私の足に、爽々(すがすが)しさのつたうを覚え、
吹く風に思うさま、私の頭をなぶらすだろう!

私は語りも、考えもしまい、だが
果てなき愛は心の裡(うち)に、浮びも来よう
私は往こう、遠く遠くボヘミヤンのよう
天地の間を、女と伴れだつように幸福に。

現代表記にしてみると
このようになりますが
常用漢字を使用し
「てにをは」を整え
より現代口語に近づけると――

私は行こう、夏の青い宵は
麦穂が脛を刺す小道の上に、小さな草を踏みに
夢想家の私は、私の足に、すがすがしさが伝わるのを覚え
吹く風が思いのままに私の頭をなぶらせるだろう!

私は語ることも、考えることもするまい、だが
果てのない愛は心の中に、浮んでも来るだろう
私は行こう、遠く遠くボヘミヤンのように
天地の間を、女と連れ立つように幸福に。

この詩の作者ランボーは
夏の夜の草原を行く自分をイメージし
麦の穂が脛を刺す野の道を行く爽快感は
やがて風の吹くにまかせて
頭の中をすっからかんにしてしまう陶酔状態を思い描くのです。

語ることも、考えることもしないが
愛だけは心のうちに浮かんでくるだろう
私は行くんだ、遠くへボヘミヤンのように自在に
天と地の間を、女を連れて歩き回っている
そんな幸福に向かって。

青春の希望は
まだランボーの中にあります
世界は未知で
麦の穂先がチクリチクリと脛をさすであろう小道が
幾重にも開けているに違いないけれど
ぼくはその道を行き、草々を踏み分けて進む
夢想家の足取りで
なにも考えずに歩こう
遠く遠くへボヘミアンのように
女を連れて歩き回ろう……

歩行者ランボーの出発です。

中原中也が
ランボーの歩行にシンパシーを感じなかったわけがありません。

語勢、語義、語呂……と
逐語訳でありながら
中原中也が重要視した翻訳の姿勢が
手に取るように見える題材といえます。

「爽々しさ」を「すがすがしさ」と読ませたり
「夢想家」「ボヘミアン」と思い切った語彙を使ったり
「遠く遠く」という繰り返しなど
(ほかにも色々な試みが行われていますが)
「中原中也のランボー」がくっきりしています。

 *
 感動
 中原中也訳

私はゆかう、夏の青き宵は
麦穂臑(すね)刺す小径の上に、小草(をぐさ)を踏みに
夢想家・私は私の足に、爽々(すがすが)しさのつたふを覚え、
吹く風に思ふさま、私の頭をなぶらすだらう!

私は語りも、考へもしまい、だが
果てなき愛は心の裡(うち)に、浮びも来よう
私は往かう、遠く遠くボヘミヤンのやう
天地の間を、女と伴れだつやうに幸福に。

(講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」より)
※ルビは( )の中に入れ、一部、新漢字を使用しました。編者。

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