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2011年11月30日 (水)

中原中也が訳したランボー「わが放浪」付録篇2・西条八十とランボー

西条八十が「アルチュール・ランボオ研究」を著わすに至った経緯を
同書「あとがき」に記していますが
中に最初のランボー論を書いた頃のことが書かれてありますから
それを読んでおきましょう。

 ◇

(略)
わたしは最初のランボオ論を昭和の初頭早稲田大学出版部発行の研究論文集に載せ、それは昭和四年、改造社発行の『新選西条八十集』(中)に再録された。

昭和十三年わたしはパリへ行ったが、たまたま亡友柳沢健とこの詩人の故郷シャルルビルを訪ねた。駅前の広場には、ささやかな彼の記念塔が立っていた。(この碑の建立日の光景を、エルネスト・レイノオは、その著『象徴主義者の群れ』の中で委しく面白く書いている。)しかし、その記念塔の上の肝心の詩人の頭像は無かった。第一次欧州大戦中この町を占領したドイツ軍が、砲弾に鋳直(いなお)してパリへ撃ち込んでしまったのだそうである。

わたしたちは携帯したパテルヌ・ペリションの『ランボオ伝』を案内書に、詩人の生家や学校や、ミューズ河畔や、さまざまな想い出のあとを辿って歩いた。そして、当時故郷でこの詩人の名を知っている人の少ないのに驚いたのである。

当時彼の詩集はポール・クロオデルが序文を書いたメルキュール版のそれが唯一のものであり、研究書はペリションの書いた伝記や、英人エジェル・リックワードの『ランボオ伝』などが主なものであった。(略)
(※行空きを追加してあります。編者。)

 ◇

上田敏に先立って
「酩酊船」を訳した柳沢健がここに登場します。
西条八十と柳沢健とは
かたや早稲田系、かたや東大系でありながら
昭和13年にはランボーの生地へ同道する旅人でした。

早稲田系の文学者と
東大系の文学者との交流は
まったく行われなかったということではなく
どちらかの活動がどちらかへと
伝播することも一切無かったわけでもないことが
はっきりとわかる二人の詩人の交友関係です。

メルキュール版のランボー詩集も
ここに登場します。
中原中也や小林秀雄や富永太郎らも
メルキュール版でランボーと出会いました。

西条八十の最初のランボー論は
昭和4年に発表されているのですから
これを中原中也が読まなかったという確証はありませんが
読んだという確証もまったくありません。
いまや、それは実証不可能なことがらです。

昭和4年は4月に
同人誌「白痴群」を発行し
翌5年には廃刊に至ってしまうものの第5号に
中原中也はベルレーヌの「ポーヴル・レリアン」を訳し
その中のランボー「フォーヌの頭」や「盗まれた心」を訳しています。
翻訳の発表をやや本格的にはじめた頃のことです。

昭和初期は
幾つかの星雲が
お互いの存在を遠巻きに見ながら
坩堝(るつぼ)のように活動していた時代だった――。

 *

 わが放浪

私は出掛けた、手をポケットに突つ込んで。
半外套は申し分なし。
私は歩いた、夜天の下を、ミューズよ、私は忠僕でした。
さても私の夢みた愛の、なんと壮観だつたこと!

独特の、わがズボンには穴が開(あ)いてた。
小さな夢想家・わたくしは、道中韻をば捻つてた。
わが宿は、大熊星座。大熊星座の星々は、
やさしくささやきささやいてゐた。

そのささやきを路傍(みちばた)に、腰を下ろして聴いてゐた
あゝかの九月の宵々よ、酒かとばかり
額(ひたひ)には、露の滴(しづく)を感じてた。

幻想的な物影の、中で韻をば踏んでゐた、
擦り剥けた、私の靴のゴム紐を、足を胸まで突き上げて、
竪琴みたいに弾きながら。

※講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」では、第8行を「やさしくささやきささめいてゐた。」としてあるため、今回は、角川書店「新編中原中也全集 第3巻 翻訳」より引用しました。編者。
※ルビは原作にあるもののみを( )の中に入れました。編者。

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