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2011年12月13日 (火)

中原中也が訳したランボー「坐つた奴等」とベルレーヌ「呪われた詩人たち」

「坐った奴等」Les Assisは
ベルレーヌが「呪われた詩人たち」の中で
アルチュール・ランボーを紹介した時
ランボーの作品として引用した詩篇の一つです。

ベルレーヌは
「呪われた詩人たち」中の「アルテュル・ランボオ」に
「母音」
「夕べの祈祷」
「坐った奴等」
「びっくり仰天している子ら」
「虱をとる女たち」
「酔っぱらった船」の全文、
「初聖体拝領」
「パリは再び大賑わい」
「永遠」の一部を引用しました。
(※以上のタイトルは、中原中也訳のものと必ずしも一致するものではありません。)

これらの詩は
ベルレーヌとランボーの親密な交流の中で
ランボーがベルレーヌに預けたり
ベルレーヌがランボーの口から聞き取り
筆写しておいたりした詩篇群から選んだものでした。

ベルレーヌは
1884年、ヴァニエ書店から「呪われた詩人たち」を出版、
コルビエール
ランボー
マラルメの3人の詩人論を著しましたが
1888年に、同書の増補改訂版を刊行、
新たに、ヴァルモール
リラダン
ポーヴル・レリアンを追加しました。

ポーヴル・レリアンは
ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaineの綴りを入れ替えたアナグラムによる偽名で
ベルレーヌ自身のことです。

ベルレーヌが
パリで「呪われた詩人たち」を発表した頃
ランボーは詩活動から遠ざかり
アフリカ(現エチオピア)で
武器などを商うビジネスに従事していました。

中原中也が訳した「アルテュル・ランボオ」は
この「呪われた詩人たち」の中にありますが
テキストとして用いたのは
この増補改訂版を使用して編集された
メッサン版「ヴェルレーヌ全集・第4巻」にあるものです。

ここで中原中也が訳した
この「呪われた詩人たち」の中の「アルテュル・ランボオ」を読んでおきましょう。

中原中也訳の「アルテュル・ランボオ」は
未発表で未完の散文ですが
この中に「坐った奴等」の第1次形態が
「坐せる奴等」のタイトルで訳されてあり
1次形態ながらビビッドな訳出になっています。

中原中也の訳稿は2種類あり
訳稿A、訳稿Bと称されていますが
「坐せる奴等」は、訳稿Bにあります。

訳稿Bは、
「坐せる奴等」を引用し
解説を加えたベルレーヌの文の翻訳です。
まずは、その訳稿Bの解説部分を見ます。

 *

 アルテュル・ランボオ

        ポール・ヴェルレーヌ

(訳稿B)

  坐せる奴等
  (省略)
  
 私は今此の詩を、学者ぶつて冷然と誇張して全部掲げた、そのいともロジックな終りの章、かくも嬉々として果断な章をまで掲げるを得た。読者は、今やイロニイの力、此の詩人が恐るべき言葉の力を感得せられたことと思ふ。それよ、此の詩人が我々に考慮すべく残したものは、かのいと高き賜物、至上の賜物、智識の壮大な立証、誇りかな仏国的経験である。最近の卑怯なる国際主義流行に際して、力説すべきは、民族生来の宗教的崇高、即ちランボオが人間的心と魂と精神との不滅の高貴性の不羈の確言である。即ち千八百八十三年の自然主義者等が狭き趣味、絵画的関心によつて否みし優しさ、強さ、また大いなる修辞をである!

 強さは、上記の詩篇には殊によく顕はれてゐる。その強さたるや逆説や、或る種の形に紛れてのみ現はされ得る所の恐しく美しい気雰の其処に潜められてゐる。その強みは、美しく純粋な彼が総体の中に、この一文が終る時分にはいよいよ明瞭となるであらう。差当り、それは「慈悲」だと云つておかう、従来は知られてゐなかつた特殊な慈悲、其処に珍奇は、かの思想と文体との純潔さ、極度の優しさに、塩や胡椒の役をする。

 少しくは野生的で、非常に軟かく、戯画風に綺麗で、親しみ易く、善良で、なげやりで、朗らかで、また先生ぶつてゐる、次の作品の如きを我等嘗ての文学に覓めることは出来ない。

(角川書店「新編中原中也全集 第3巻 翻訳」より)
※原作では「なげやり」に傍点があります。また、読みやすくするために、原作にはない行空きを加えてあります。編者。

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