新春に読んでおきたい中原中也の詩・その9「(お天気の日の海の沖では)」
(お天気の日の海の沖では)
お天気の日の海の沖では
子供が大勢遊んでゐるやうです
お天気の日の海をみてると
女が恋しくなつて来ます
女が恋しくなるともう浜辺には立つてはゐられません
女が恋しくなると人は日蔭に帰つて来ます
日蔭に帰つて来ると案外又つまらないものです
それで人はまた浜辺に出て行きます
それなのに人は大部分日蔭に暮らします
何かしようと毎日々々
人は希望や企画に燃えます
さうして働いた幾年かの後に、
人は死んでゆくんですけれど、
死ぬ時思い出すことは、多分はお天気の日の海のことです。
(一九三四・一一・二九)
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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