新春に読んでおきたい中原中也の詩・その16(南無ダダ)
(南無 ダダ)
南無 ダダ
足駄なく、傘なく
青春は、降りこめられて、
水溜り、泡(あぶく)は
のがれ、のがれゆく。
人よ、人生は、騒然たる沛雨に似てゐる
線香を、焚いて
部屋にはゐるべきこと。
色町の女は愛嬌、
この雨の、中でも挨拶をしてゐる
青い傘
植木鉢も流れ、
水盤も浮み、
池の鯉はみな、逃げてゆく
永遠に、雨の中、町外れ、出前持ちは猪突(ちょとつ)し、
私は、足駄なく傘なく、
茲(ここ)、部屋の中に香を焚いて、
チウインガムも噛みたくはない。
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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