新春に読んでおきたい中原中也の詩・その18「雪の賦」
雪の賦
雪が降るとこのわたくしには、人生が、
かなしくもうつくしいものに——
憂愁にみちたものに、思へるのであつた。
その雪は、中世の、暗いお城の塀にも降り、
大高源吾(おほたかげんご)の頃にも降つた……
幾多(あまた)々々の孤児の手は、
そのためにかじかんで、
都会の夕べはそのために十分悲しくあつたのだ。
ロシアの田舎の別荘の、
矢来の彼方(かなた)に見る雪は、
うんざりする程(ほど)永遠で、
雪の降る日は高貴の夫人も、
ちつとは愚痴でもあらうと思はれ……
雪が降るとこのわたくしには、人生が
かなしくもうつくしいものに——
憂愁にみちたものに、思へるのであつた。
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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