新春に読んでおきたい中原中也の詩・その12「はるかぜ」
はるかぜ
あゝ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
空は曇つてはなぐもり、
風のすこしく荒い日に。
あゝ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
部屋にゐるのは憂鬱で、
出掛けるあてもみつからぬ。
あゝ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
鉋(かんな)の音は春風に、
散つて名残はとめませぬ。
風吹く今日の春の日に、
あゝ、家が建つ家が建つ。
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
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